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No.74 Francis Dunnery / Tall Blonde Helicopter 1995(UK)

It Bites
It Bitesのメイン・パフォーマー、Francis Dunneryは、1990年代前半、社会人になって久しく私にとって特別な存在だった。
その当時はアイドルのような容姿だったが、ギターがとてつもなく巧く、しかもジョン・レノンかレイ・デイヴィスかという、ルックスを裏切るような不良っぽいメロディーへの拘りが、とてつもなく魅力的だった。

ロバート・プラントの口利きでメジャーレーベルのAtlanticからリリースされたソロ・セカンドのFearlessはファンからすれば絶品歌メロ満載だったが、客観的に見れば、みずからのポジショニングに迷いが禁じ得ない 試行錯誤の産物だった。
セールス的には不調に終わったのであろう、続くサードは1995年、 無名レーベルからのリリースとなった(と思ったら、これまではAtlanticだった)。
タイトルは、Tall Blonde Helicopterという。
そしてジャケットは短く髪を刈り込んだFrancisが子犬を抱えたモノクロのポートレート
これだけでこのアルバムの位置づけは明白だろう。


個人史的に思い出を振り返ると、とにかくFrancis Dunneryへの思い入れが格別だった時期で、新入社員として最も困難な状況下、しばしば都内の輸入レコード店を散策するのが何より楽しみだった。

そういえば、元カイパのRoine Stoltがセンセーショナルな復活を遂げた直後でもあった。
そのサウンドもIt Bitesとの比較で捉えていたほど、当時、It Bitesの存在感は自分の中で大きかった。

そんな中、思いかけずFrancisの新作ソロを発見して、のけぞった。
これこそ、私の理想のサウンドだった。
そして、Francisに望むものそのものだった。
よくぞ、これをやってくれた、と歓喜した。

今、聴くと、本当に普通のロックなのだ。
私が彼に期待していたのは、彼が普通のロックをやることだったのだと思う。

珠玉の歌メロは全開。
最初はもちろん、Too Much Sternだ。
It Bitres時代の数々の歌メロを継承する、Dunnery節そのもの。



次にはまるのがNew Yorkのバラード、そしてCat Stevenのカヴァー辺りか。
こうなると、プログレもIt Bitesも関係ない。
今にして思えば、この境地が本望だったか。



そして、その上でもなおプログレファンを魅了するギター・ソロを披露してくれるラストソング、Grateful and Thankfulに究極の純度のミュージシャン魂を感じ取ったものだ。

いわゆるプログレではもちろんない。
しかし、これこそが自分の到達した最終地点と、当時、実感していた。
そういう、やはり個人的には比類ない名作である。