No.69 Coda / Sounds of Passion 1986(Holland)

プログレッシブ・ロック不毛の時代、1980年代の半ば、突如として登場し、日本のプログレ・ファン、シンフォニック・ロック・ファンを魅了した一級品にオランダのコーダがある。
メジャーシーンではEL&PがP違いで復活を果たし、GTR、ジェネシス、ゲイブリエル、ムーディー・ブルース等が同時期にチャートインした時期と重なる。当時、都内の輸入レコード店への入荷と同時にマーキー誌上のレビューで絶賛されていたので、我々好事家はほぼオートマティックにこのコーダの『Sounds of Passion』を購入し、魂込めて鑑賞したものである。
バンド名、アルバム名からも窺われる通り、徹底的に意図されたプログレ、ロック・シンフォニーである。イエスやジェネシスおよびその追従者たちと比べても、明らかに正規な音楽教育を受けた人材が半ば趣味のような形でやってみせたトライアル的作品と言える。
カラーペンシルの淡いイラストの、どこか日本テイストのジャケットも、本作のそんなポジションを象徴している。
ざっくり言うと、The Enidに一番近いのだが、彼らのごときプロテスト性、非音楽的イデオロギーがない分、純音楽的な全体バランスはより高い。リーダーはおそらくRobert John Godfreyのような人物なのだろう、この後はデモテープ集のような作品を一つ残したのみで、このフィールドでは特にアウトプットはない。

プログレという形式についてのみ極めて意識的な音楽という意味では、同じ頃から活発化した日本のプログレに近いセンスも感じ取れる。同時代音楽としてのロックのリアリティはほぼ皆無だ。
また、30分以上に及ぶ組曲となる表題曲もドラマティックな展開を見せるが、多分に映像表現的であり、往年のプログレが共通して持っていた扇情性がない。それがまた新鮮であり、意外でもあった。

今、聴き直すと、卓越したテクニック、プロフェッショナルな全体設計、抑制の利いた均衡美と、少し桁外れのクオリティーを再認識させられる。純粋に音楽の総合的構築力としてはダントツの存在かもしれない。
しかし、その一方、エモーショナルな魅力はどうかと言えば、これはまた別問題であった。
恐ろしく完成度は高いのだが、どこか教科書的であり、少し遊びや揺らぎがない、と言えなくもない。
その分、組曲以外のヴォーカル曲が妙に古めのハード・ロックに寄っていて古めの叙情的バラードだったりして、人間臭い魅力になっている。

当時は本当によく聴いた。特にヴォーカル曲だろう、クライマックスのメロトロンと泣きのギターのハーモニーが気に入っていた。いずれにしても個人的には、時代に対してリアリティのある異議申し立てとしてプログレッシブ・ロックの限界、あるいは終焉を感じた作品の一つであったと、今にして思う。