読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

No.62 Pallas / The Sentinel 1983(UK)

The Pallas
1980年代、プログレッシブ・ロック発祥の地であるイギリス、そのアンダーグラウンド・シーンでは、ポンプ・ロックと呼ばれるムーブメントが進行していた。
代表格は国民的バンドとしてのステータスを確立したマリリオンだが、かなり距離を置いて二番手に付けていたのがこのパラスあたりだろう。EMIからのメジャー第一弾は、プロデューサーにイエス、EL&Pで有名なエディー・オフォードを迎えた特別待遇で、マリリオン級の成功を狙った。

ジャケットは、ロジャー・ディーンを凌ぐSFファンタジー志向だし、メンバーのクレジットにはリッケンバッカー、オーバーハイム、ARPミニムーグ、ノヴァトロン等、社名入りで往年の名機が詳しく書き込まれている。
基本的には全盛期のイエスだが、同時代に一世を風靡していたエイジアやラッシュ、或いはアイアン・メイデンを筆頭にするNWOBHMからの影響も強く、随所にハード・ロック/メタル志向が見え隠れする。それをどう評価するかで本作の位置づけも変わってくるであろう。当時、高校生の自分もけっこう気に入って聴いていた。正統派シンフォニック・ロックとしては、少し邪道だという先入観も捨てられなかったが、セールス的にはメタル・ファン層も取り込んでそれなりに善戦した。
今、聴いてハッとさせられるのは、アナログシンセ群の大活躍である。ゴージャスなロック・シンフォニーというイメージは、同時代で同機材を駆使していたThe Enidを連想させる響きも少なくない。The Flower KingsとSpock's Beard以降の、肚の決まった今のシンフォニック・ロックとはまた少し違う独特の味わいがある。
エディー・オフォードの気合いの入ったプロデュースも貢献度が高く、どこをどう切ってもメジャーな作りの堂々たる完成度だが、1980年代半ばのシーンは、こういう志向の音はほとんど絶滅したような状態だった。しかし、セールスは大手EMIの要望に応えるには至らず、再びアンダーグラウンドでの低迷を余儀なくされるも、同年代のペンドラゴンやIQと同様、1990年代に入る頃に音楽的にも、また興行的にも一回りも二回りも成長を遂げる。そのブレークスルーを経て本国で改めて揺るぎないステータスを確立し、今日まで不動の長寿バンドとして君臨することとなる。
このような想定外の息の長さも、その当時、ポンプ・ロックと揶揄されたバンド達が共通して持っていた謙虚さ、堅実さを証明している。

1984年発表。
愛聴期は1984年から1986年頃。