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No.61 Francis Dunnery / Welcome to the Wild Country 1991(UK)

It Bites
イット・バイツ解散後、バンドの中心人物だったフランシス・ダナリーがいち早くリリースしたソロ第一弾。イット・バイツの魅力の大半を担っていたのが彼であったことは誰にも自明だった。残った3人もバンド継続を試みたが、軌道に乗るには至らず、その前にダナリーが単身で動き出した。自分を含め、イット・バイツ解散に失望していたファンの期待はおのずとここに集中した。

プロデューサーは、ジェネシスの音楽的全盛期とも言える1970年代後半を支えたデヴィッド・ヘンツェル氏。当初、イット・バイツの次作を手がける予定だったところ、ダナリーのソロに変更して継続担当となった。あまりにも大物すぎる人選だ。

プロデューサーのみならず、これは本来、イット・バイツの4作目となるべきプランだった。
基本フォーマットはイット・バイツの最終作となったEat Me at St.Louisとまったく同じであり、単純に言えば、そこから、ジョン・ベックの豪華絢爛、装飾的デジタルキーボードを排し、ボブ・ダルトン、ディック・ノーランの重厚無比の鉄壁なリズム・セクションを無名アメリカ人組に入れ替えただけと言っても過言ではない。
それほどイット・バイツとの近似性は高い。
演奏面での相違点は上記のようなところだとして、より純音楽面ではイット・バイツ時代、火花を散らしていたダナリーとジョン・ベックの主導権争いの緊張感は解消し、ダナリーの趣味嗜好をそのまま表出したものとなっている。そのためか、全体にどこか去勢されたような印象が拭えない。

何と言っても、リズム・セクションの弱体ぶりが顕著である。
一体、なぜ、このような布陣で制作に入ったのか、理解に苦しむ。イット・バイツへの郷愁ゆえ、当初はしばらく鑑賞することができなかった。
逆にイット・バイツのリズム・セクションがいかに秀逸だったかを再認識させられた。特にダルトンの切れ味抜群、タイトなドラミングだ。不可欠なサウンドの要、最重要ファクターだったことを改めて痛感した。
そもそもプロデューサーのデヴィッド・ヘンツェルは、ジェネシスをはじめ、華やかで情報量の多いリズム・セクションを得意としたはずだ。しかし本作では意外にも凡庸で没個性的な処理に終始しており、首を傾げたくなる。

そうは言っても基本的にはダナリーの「ビートルズ級」純度のメロディーだ。
しばらくすると耳に慣れてきて、これはこれ、という感じでずいぶん愛聴した。後半はかなり粗っぽい作りの捨て曲もあるが、このけれんみない捨てっぷりがまた魅力になってしまうのは惚れた者の弱みであろうか。

全編ダナリー節全快だが、定番はやはり「Heartache Reborn」だろうか。
イット・バイツの代表曲、Yellow Christianによく似た、と言うかほとんどパロディのような曲だが、こういう何気ないミディアムテンポの曲をメロディーだけで聴かせてしまう妙技はやはり天才の証明である。

1991年発表。
愛聴期は1992年〜1994年頃。