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No.58 Mauro Pagani / Same(地中海の伝説)1979(Italy)

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PFMのメインパフォーマーだったマウロ・パガーニがバンドを脱退して発表した初のソロ・アルバム。
日本でもPFMの顔として固有名詞で人気があったらしく、キングレコードは「ユーロピアン・ロック・コレクション」を始めるにあたって、その時点ではまだ新作扱いだった本アルバムを記念すべき第一号にエントリーした。

最も注目度の高いアルバムで、多くのPFMファンが購入したに違いない。しかし、PFMのようなシンフォニック・ロックを期待したならば、幻滅するか、当惑したであろう。地中海の民族音楽色が濃厚であり、もはやロックという枠に収まらないような作風である。マウロ自身にしてみれば、みずからの音楽的ルーツに回帰する試みであり、それをPFM以来のファンがどう受け止めるかは二次的な問題だったのだろう。彼がいかに芸術家として純潔であったかを証明するような作品だが、興味深いのは脱退した後のPFM自体もほぼ同じく地中海音楽へと回帰していったことである。

いわゆるファン受けを狙った作品ではない。 これに対してPFMファンの反応は二分したに違いない。PFMの音楽をそのまま期待したファンは敬遠したであろう。逆にPFMの先を求めたファンには最高の贈り物となったはずだ。

最大の聴き所は、デメトリオ・ストラトス以下、アレアの面々を従えての「木々は歌う」での緊張感あふれるアンサンブルとめくるめくインタープレイであろう。デメトリオの独創的なヴォーカルの迫力に腰を抜かしたリスナーも多かったに違いない。

自分自身は、「木々は歌う」はFMラジオのユーロ・ロック特集で聴いていたが、アルバム全体を聴いたのは大学時代に中古盤を購入してからだった。決して悪い印象ではなかったが、やはりロック色が薄いので自然と聴き込むには至らなかった。
決して意識的に探求してきたわけではないが、様々なワールド・ミュージックを自然に変遷してきた後に今、改めて聴き直すと、実に味わい深い。先を行き過ぎて、プログレという枠に安住できなかった若いマウロの純粋なミュージシャンエゴと、それに応えるアレアの面々との理想的なコラボレーション。時代の諸制約を一切抜きにして純音楽として自然体でこの真価を堪能できる。