No.55 Gong / You 1975(France)

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デヴィッド・アレン率いるゴング。
1960年代後半から1970年代前半、プログレッシブ・ロックの黎明期から全盛期にかけて、カンタベリー・シーンの中枢に君臨し続けたビッグネームだが、混沌とした時代の空気が忘れ去られるにしたがって、プログレ正史の中でも存在感が薄くなってしまった感が強い。
元々はプログレでも、音楽でもない。サイケデリック・ムーブメントの申し子である。
サイケという言葉の意味がモードになった時点で、ゴングの本質はもう見えなくなった。
つまり、ゴングは一般的な意味でのロック・バンドと言うより、マグマやエニドなどと同じく、音楽以前にある種のイデオロギーを持つ同志によるアートコミュニティなのだ。
しかし、自分も含めてプログレ・ファンはゴングのイデオロギーにあまり興味はない。
あるのはそこから生まれた音楽であるが、音楽だけを切り取って評価されることは、中心人物のデヴィッド・アレンにしてみれば、本望ではなかったのかしれない。
彼自身、ミュージシャンというより、ヒッピーというイメージだ。
その半面、ゴングから輩出されたミュージシャンは職人揃いで、スティーブ・ヒレッジ、ティム・ブレイク、ディティエ・マルハーブ、ピエール・ムーランなど数知れず、あのスティングも元はと言えば、デヴィッド・アレンの周辺に居たというから、その人材の裾野は広い。

初期ヴァージンレーベルからリリースされた『You』は一般に彼らの最高傑作である。
エキセントリックなサイケから本格的なプロフェッショナルによる総合芸術的プログレを指向していった結果、到達した集大成であり、前述の個性豊かなエキスパート達が最高のパフォーマンスを聴かせてくれる。この直後にバンドは分裂し、半分はピエール・ムーランズ・ゴングが継承し、デヴィッド・アレンの意味不明な文学的世界からはドライに足を洗い、テクニカルなジャズ・ロックとして純音楽的な道を進むことになるわけだが、ここでも既にその片鱗が伺われる。

中心人物の掲げるコンセプトからすれば、過剰以外の何ものでもないバカテクの応酬だが、我々にとってはそれが本作における最大の魅力となっている。

自分が一番聴いたのは高校時代で、ピエール・ムーランが大のお気に入りだった。やはりジャズ・ロックの一種として聴いていたのだと思う。

 
Master Builder from You album