No.54 Camel / The Snow Goose 1975(UK)

抒情派ロックの筆頭格として、英国プログレッシブ・ロックのいわゆる5大バンドに次ぐ存在のCamelは、7歳年上の兄のお気に入りであり、自分が洋楽を聞き出した時には1970年代のほとんどのレコードが揃っていた。
デビュー作から通算6枚目の『Breatheless』あたりまで、いずれも甲乙つけがたい傑作揃いだが、その中でも代表作を一枚だけと言えば、童話作家ポール・ギャリコの短編『白雁』にインスパイアされた全編インストのコンセプトアルバム『The Snow Goose』を選ぶであろう。
最初は少し退屈に感じたが、メインテーマのRhayader、フルートによる素朴で可憐な旋律がとても魅力的だと気づき、そういう感度で聴けば、最後の最後まで感動的なドラマの連続だと開眼し、改めてプログレッシブ・ロックの奥深い深淵に触れる思いであった。

Camelの最大の魅力は、徹底的に甘くて繊細な叙情派でありながら、切れ味鋭い技巧派としての面も持ち合わせていたところであろう。
取り分け、Andy Wardの凝ったハイハットワーク、メロディアスなドラムは、ともすると甘さに流さそうなCamelの女性的な世界を抑制し、テクニカルな演奏体としてのクオリティを支えていた。

本作のもう一つのメインテーマは、悲劇のヒロインのFrithaを表すメロディーで、何も弁えぬ中学生であった当時の自分も、クライマックス前のピアノソロには心打たれたものである。