No.53 Magma / Retrospektiw III 1980(France)

Retrospektiw_III_Magma
ユーロ・ロック史上、最大クラスの存在感を誇るフランスの巨星Magma。
唯我独尊、この比類なき孤高の存在を自分が知ったのはいつ頃だったであろうか。時期的にはやはり高校に入る前後だとは思うが、これがどんなイメージで自分の視界に入ってきたのかはよく思い出せない。
一般的なロック・バンドではない、というのはすぐわかったはずだ。
野性味漂うルックスのChristian Vanderというリーダー兼ドラマーを中心として、様々なメンバーが流動的に入れ替わりながら活動を続ける一種のコミュニティ。同じくフランスのパリを拠点としていたGongと双璧を成す存在。イメージ的にはそんなところだったように思う。

当時、輸入レコード店で行って、フレンチ・ロックのコーナーに必ずあったMagmaのアルバムが『Retrospektiw』のvol.1からvol.3のライブ盤だった。
1980年、結成10周年を記念したパリ公演の実況収録。
vol.1とvol.2が2枚組セットで、vol.3だけが単独でリリースされていた。
その時点での最新作『merci!』はまだリリースされていなかったので、1983年頃、つまり中学3年の時ということになる。

私が最初に聴いたのは、そのvol.3の方だった。
混声コーラスの入ったファンキーな音楽で面を食らった。アース・ウィンド・アンド・ファイアのような感じだと思ったが、それをプログレッシブ・ロックという文脈の中でどう受け入れれば良いのか、戸惑ってしまった。
しばらく放っておいた後、気を取り直して恐る恐る聞き直してみると、ドラムの手数が恐ろしく多いのに唖然とした。まだカール・パーマーが大好きだった頃だ。自分にとって手数が多いドラムがすなわち良いドラムだった。モンスター級に手数の多いドラムに魅了されてよく聴いてみると、ベースがリード楽器となっており、その上を混声コーラスとギターが中心になって次から次へとせわしなく場面展開を繰り広げる。演劇を見るような変化の早さが堪らなくなった。

A面すべてを費やした18分の大曲「Retrovision (Je Suis Revenu De L’Univers) 」は、Magmaとしては最高にポップサイドに振ったもので、表面的には黒人ぽいファンキー、陽気なダンサブルチューンだが、曲の構造はやはりプログレそのものである。
ディオニソスとアポロの融合。理屈抜きにノリの良さを堪能すればよい。特に後半の男女ヴォーカルの掛け合い、叙情的なギターソロも申し分なしだ。彼らの絶頂期、最高潮とは言いがたいが、これはこれで完璧なパフォーマンスであろう。

B面のHhaiは、ユーロ・ロック史上最高の名作名盤として誉れ高いMagma Liveからの再現になるが、その時点でジャズ畑で世界的ステータスを確立していたディディエ・ロックウッドも友情参加している。火を吐くようなヴァイオリンは変わらないが、この曲に関する限り、シンセサイザーを縦横に駆使した派手なアレンジのこちらの方が魅力的かもしれない。