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No.47 Focus/Sylvia from Live at the Rainbow 1973

オランダのフォーカスは、イタリアのPFMに先立って、インターナショナルな成功を収めたユーロ・ロックのさきがけ、草分け的存在だが、1970年代初頭、ブリティッシュ・ロック全盛期にハード・ロックプログレを代表する名門バンドと並び、イギリスで人気を博したためか、特にユーロ・ロックという文脈を必要としない。

もう一つにはギタリストのヤン・アッカーマンのステータスだ。
リッチー・ブラックモアはじめ多くのギタリストが絶賛したことで日本のギター少年を含むプレイヤー側から神格化されていたようだ。
甘いマスクを隠した渋いルックスも最高だし、その後は中世音楽に傾倒するなどの職人気質もいかにも玄人受けしそうだ。しかし、実際の年齢は意外と若く1945年生まれだから、フォーカス時代はまだ20代後半、隠遁者めいたソロワークに入ったのもせいぜい30代半ば。
実に早熟な天才であった。

フォーカス全盛期のライブ・アルバム『Live at the Rainbow』は当時から名ライブの誉れをほしいままにしていた。今、改めて聴くと、いかにも渋い、玄人好みの地味なクラシック・ロックで、表層に囚われることなく、これを名盤と絶賛した当時のプレスには、何と心があったのかと感慨深い。

自分がこの廉価盤レコードを買ったのは、1983年か1984年の正月であった。
「悪魔の呪文」とメドレーで演奏されるインスト曲の「Sylvia」がハイライトである。
「え、これが許されるのか。。。」
当時、中学生だった自分も最初は当惑したと思う。
あまりにも正面からド演歌な泣きのフレーズは、クサいと言えば、どこまでもクサい。
そんな限界突破な甘い魅力に満ちたギターがヤン・アッカーマンの真骨頂でもあった。
誰よりも渋いルックスと高度なテクニックを兼備した彼だから許される禁じ手のような一曲。

しかし、ここまでクサいド演歌なインスト曲がその当時、英国シングルチャートの5位にランクインしたというのを最近、知って、ちょっと驚いた。クサさの感度が違うのかもしれない、と。
   
その後、ヤン・アッカーマンの芸風を少なからず継承するプログレ界の貴公子、ロイネ・ストルトがTransatlanticの新作の中で「Sylvia」をカバーしている。
こういう愉しい企画がそのまま世に出る、本当にいい時代になったものだ。
クサさの壺を心得た、さすが歴戦のロイネならではの名パフォーマンスである。