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No.42 【イタリアン・ロックの輝き】Goblin『マーク幻想の旅』(1978)より

イタリアン・ロックの輝き Goblin
本当に思う。
ほんの少し前まであり得なかったことである、と。
世界中のほとんどの音楽がクリック一つで無償で聴けるというネットアナーキーの現状である。
これは、音楽を命として生きてきた自分のような人間には大問題であり、みずからの世界観、人生観に大きな修正を加えなければならないほどの環境変化である。

イタリアン・ロックは私の十代の終わり、青春の大切な思い出である。
今、改めて感動を新たにしたい。

筆頭は、恐怖映画のサウンドトラックによってインターナショナルな知名度で断然ナンバーワン のゴブリンである。
彼等の絶頂期は1970年代後半。
イタリアン・ロックのムーブメントからは少し外れて、いわば自力で国際的ステータスを獲得した実力派。
しかし、その魂は筋金入りのプログレッシブ・ロック主義者である。

ゴブリンの音楽には元々イタリアという地方色はほぼ無い。
同時期のブリティッシュのビッグネームと比べても、洗練ぶりは引けを取らない。むしろ凌駕している。
総合力ではブリティッシュの切り札として登場したU.K.(ブラッフォード、ウェットン、ジョブソン、ホールズワース)とほぼ同格というのが個人的な認識だ。

それを証明するのがU.K.と同じ1978年リリースの『マーク幻想の旅』という傑作。

日本では1983年、キングレコードの専門レーベルの「Nexus International」第一期として、「何気なく」紹介されたが、私としてはイタリアンロックの最高峰である。

当初からシアトリカルなヴォーカルが評判が悪いのだが、少なくとも自分はまったく気にならなかった。
また曲が5分前後とコンパクトでメロディー重視のポップ路線も「サスぺリア」のゴブリンらしからぬ、と言われた。
これも全然問題ではない。大歓迎である。

それより何より、私がゴブリンに魅せられたのは、第一にドラム、第二にはベースであった。
そして実はすべてはキーボードの果てしないプログレ指向故である。

まずドラム。アゴスティーノ・マランゴーロというセッションミュージシャン。
これはプログレ・ドラム道の理想形そのものである。
繊細なリズムワーク、切れ味の鋭さ、そしてキメのしなやかさ。そんな形容詞を並べたくなる。
決してこれみよがしでないのがいい。
ドラムの冴えだと、やはりこれか。



次がベース。これが個人的にはやはり最高峰。
ジョン・ポール・ジョーンズに匹敵する逆走ベースライン。
何と言ってもタイトル曲だろう。



そして、ゴブリンの偉大さは、結論として云えば、とにかく総合力、音楽イデー全体の完成度だが、それを仕切っているのは、キーボードのクラウディオ・シモネッティの、期待を大きく上回るプログレ魂である。
1970年代、HatfieldやBrufordで活躍したディブ・スチュワードが、1980年代、ポップ路線で転身したはずのStewart and Gaskinでも、結局、シンフォニック・キーボードを弾き倒したのに通じる問答無用の一途なこだわりをこの人には感じるのだ。
そして、そんな彼の、これまた期待を大きく上回る若き日のインテリ・イケメンぶりを拝することができる映像があるのだから、今日の情報爆発には恐れ入る。