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No.41 プログレッシブ・ロックとの出会い

30年ほど前、中学生だった頃のプログレッシブ・ロックとの出会いは、今日に至る自分の人格形成に大きな影響を与えた原体験である。
改めて記憶をたどってみると、その過程ではずっと忘れていたアイテムが貴重な情報源として重要な役割を果たしていたことを思い出した。
いずれも今では手元にないが、その内容は鮮明に思い出すことができる。それほど、当時の自分はそれらの情報を大切にして日常的に接していたということであろう。
今回、インターネットで検索しても、それらに関する情報はほとんどヒットしない。プログレ・ファン、ユーロ・ロック・ファンの中には同じような経験を持つ人も片手くらいか、少しは居るとは思うが、さすがに遠き日の個人的な思い出を記して公開しようという奇特な人は居ないらしい。

一つ目は、NHK-FMで平日の午後4時から6時まで放送していた『軽音楽をあなたに』という番組で組まれたユーロ・ロック特集。自分の記憶だと中学2年の終わりだったので、1983年3月ではなかったかと思う。
学校から急いで帰宅してエアチェックしたカセットテープが、その後、ずっと宝物となった。
最初はイタリアものから始まり、ニュー・トロルスの「コンチェルト・グロッソ」から「Adagio」、PFMは英語盤から「Celebration」と「甦る世界」、続いてMauro Paganiのソロからアレアとの共演「木々は歌う パート1」、オザンナは「ミラノ・カリブロ・9」から最初の2曲。
ドイツものは、抒情派プログレの雄ノヴァーリスとサテン・ホエール。スペインは、ロス・キャナリオスの大作『四季』から「春」全編。ハンガリーからはオメガのライブからオープニング部分。
オランダは有名なフォーカス「悪魔の呪文」、フランスものとして、アトールは『組曲夢魔」』からインスト「カゾット№1」、アンジュ「羊飼いのポケットの中に」、パルサー「前兆」。
選曲は当時、キング・レコードが力を入れていたユーロピアン・ロック・コレクションに偏っているものの、ユーロ・ロック入門編としては申し分のないプログラムであった。

二つ目は、そのユーロピアン・ロック・コレクションを企画したキングレコードが広告宣伝ツールとして制作した小冊子。音楽雑誌の紹介記事を見て切手を同封して送付申し込みして入手した記憶が有る。
表紙のカバがオランダのCosのアルバムジャケットだということは後日判明したが、中身はコレクションの全作品紹介とともに、ユーロ・ロック関係者の座談会や国内未発売の秘蔵盤紹介など、盛りだくさんでとても無償配布の拡販ツールとは思えない。
今、思い出すと、その小冊子は三冊目で、ユーロピアン・ロック・コレクションが一区切りして、新たな後継シリーズとして「ネクサス」という専門レーベルを立ち上げたタイミングで制作されたものだった。そのためか、関係者の熱い気合いが子供心にもそのまま伝わってくる、まさに「ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・ユーロピアン・ロック」だである。

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三つ目は、洋楽・オーディオ専門の隔週刊誌「FMファン」のプログレ特集号である。
今ではすっかり死滅してしまったが、当時はFMという冠詞を付けた音楽専門雑誌が世界の音楽シーンと日進月歩のオーディオ製品を紹介するメジャー媒体として一世を風靡していた。自分のような田舎の中学生にとっても、熱い関心を寄せる対象として存在していたのだ。
その中でもFMファンは最も格調の高い名門誌だったが、当時、フールズメイト編集長(あるいは退任後か)の北村昌士さんが執筆した概説を中心にプログレ特集記事を組んだ。1980年代に入ってから、プログレ系アーティストは過去の遺物として退けられるのが常で、ムーブメントとしてのプログレをとらえるのは画期的であった。
恐らく自分が高校1年生の初夏だったかと思う。したがって1984年頃だ。同じ号を永久保存用に数冊買った覚えが有るが、残念ながら実物を見つけることはできなかった。
北村さんの概説は、プログレの歴史を、ソフト・マシーンからキング・クリムゾンに受け継がれる即興性、実験性と、ピンク・フロイドからジェネシスにつながる演劇性、文学性の両面から解説したもので、あまり馴染みのない、少し意表を突いた歴史観であった。少し一般向けに単純図式化した観は否めないが、分かりやすい見取り図ではあった。
この特集には、英国プログレを代表する10アーティスト(クリムゾン、フロイド、イエス、EL&P、ジェネシスソフト・マシーン、ムーディー・ブルース、マイク・オールドフィールド、ゴング、ケヴィン・エアーズ?)紹介と、関連作品の全米チャート一覧が資料として掲載しており、その後しばらく自分にとって教科書または参考書のような存在となったわけである。

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