No.18 Rush/Signals

Rushの新作「Signals」が国内でリリースされたのは1982年10月21日。 地方の中学生だった自分は当日に市内のレコード店に駆けつけた。 興奮しながらターンテーブルに載せると、前作Tom Sayerをぐっと重厚にしたような暗めのシンセサイザー音に戸惑った。 それが名曲Subdivisionsとの出会いである。 シンセサイザーが今までになく前面に出てきた。その分、ギターが影を潜め、バッキングに回って、動き回るベースとドラムで曲が進んでいくというイメージ。ドラムも若干控えめになったか。変拍子がなくなったわけではないが、これみよがしな急展開は少ない。 そんな印象であったが、ともかく聴き続けた。 ライナーにはラウドネスのメンバーによる対談が載っていた。「ポリスっぽい」という指摘も出ている。レゲエの導入、ギターの分散コード、カッティング等、ポリスからの影響は明らかだった。 今、この「Signals」という過渡期の作品を振り返ると、ハード・ロックからの脱却というテーマが浮かび上がる。 はじけるような若いパワーは隠しようもないが、それを抑えようという自己抑制の意識に成熟を感じる。知性派によるロックという、形容矛盾のようなポリシーが明確になってきたのか、全体に暗めと云うか、非常にシックであり重厚さを漂わせる。 晩年のヘミングウェイを描いた「Losing It」の厭世的な繊細さは前にも後にもない気がする。 (2009/12)