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No.40 Kansas/Vinyl Confessions 1982(USA)

United States Album Review
1982年初夏のこと、カンサスのニュー・アルバムが全米チャートを着実にランクインしてきた。 「ビニール・コンフェッション」という題名でジャケットはなにやら素っ気のないデザイン。おまけにおなじみのロゴも使っていない。 「らしくないな」と感じつつ、当時中学2年生の自分はナケナシの小遣いを叩いて購入して・・・愕然。ヴォーカルが違う!裏ジャケットのメンバー写真を見て、初めてスティーブ・ウォルシュが脱退し、ジョン・エレファンテという新人に交代したことを知った。いかにもワイルドで屈強そうな大男揃いのカンサスの中にあって、見るからに違和感が漂う、線の細い若者である。 免疫性のない中学生の未熟な耳はこの思いがけない変化をいたずらに拒んだ。 音楽的にどうかと云えば、やはり大きな方向転換である。何しろ同期生バンドが揃いも揃って、いわゆるAOR路線で大成功を収めていた時期である。それに対し、取り分けプログレ志向の強いカンサスは失うものが大きく、軽薄短小の時流で迷走せざるを得なかった。 そんな焦りからか、ホーンセクションを入れたり、ハード・ロック調にしたりと試行錯誤を展開している。従来の味わいを残しながら、できるだけシンプルに、ストレートにという方針は具体的にはキーボード類を大幅に削ることとなった。悪くはないが、やはり「らしくない」。セールス的にもそこそこで終わった。 最近、この前年、スティーブ在籍時のデモがYouTubeで公開された。すでにその段階で本作収録曲の半分余りがほぼ完成しているのには驚かされた。その後追加された曲のほうがどちらかと云うと従来踏襲型で、当時一番の問題作とされたスティーリーダンAORの「Diamond and Pearls」もスティーブが歌っている。 今となっては、「らしい、らしくない」なんて関係なく、いずれも心底楽しめる思い出の逸品である。 (2009/12)