No.9 Rushへのオマージュ

何しろラッシュは最初から特別だった。 1980年代ショッパナ、Permanent Wavesがいきなり全米チャート4位にランキングされたのがきっかけとなって、ラッシュは当時のエピックソニーから日本国内に改めて紹介されることとなった。 これがアイアン・メイデンを筆頭とするNWOBHM、すなわちヘヴィー・メタルの台頭と同じタイミングであったために、ラッシュもしばらくそんなムーブメントの一角として扱われた。自分の記憶では、それぞれ英米以外の出身ということで、オーストラリアのAC/DCやドイツのスコーピオンズなどと並列して取り上げていたこともあった。 もともとラッシュというバンドのサウンドスクリプトは、キング・クリムゾン、イエス、ジェネシスなどのブリティッシュプログレッシブの系譜に近いはずだった。1980年当時はそれらの方法論が限界に達し、衰退したと思われていた。またブリティッシュの本家とは微妙に異なるテイストと指向を備え、しかもハード・ロックをルーツとするフォーマットのうえで、その方法論をやってのけたところにラッシュの独創性があった。 伊藤政則が絶賛し、販売元のエピックソニーもそれなりにはプロモーションに力を入れたが、日本でのラッシュの人気、知名度はしばらく上がらなかった。当時、FM番組で渋谷陽一がラッシュの日本での不人気をザ・フーを引き合いにしながら、リズムのノリが日本人好みではない、などといった解釈を語るのを聞いた覚えがある。 何しろ欧米での人気が凄まじかった。 日本で盛り上がらなかった理由は、やはりレコード会社が売り込もうとしたターゲット層と、ラッシュの音楽性を潜在的に支持するリスナー層との間にギャップがあったせいと思われる。 しかし、一ファンとしてはラッシュが日本で人気がないことは、どちらかと言えば、歓迎すべき事柄であった。 知る人ぞ知る最後の大物。 ミュージシャンズ・ミュージシャン。 伝説のスーパートリオ。 情報量の欠如は神格化にはむしろ好都合なのであった。 それに実際、当時のラッシュはあまりにもロック・ミュージシャンらしからぬ風貌をしていた。 ラッシュは特別、そう信じて疑わなかった。