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No.8 Asia /Asia(詠時感~時へのロマン)

1982年の年間アルバムチャートの一位に輝いた大ヒット・アルバム。 元キング・クリムゾンのジョン・W。 元EL&Pのカール・P。 元イエスのスティーブ・H。 +ジョフリー・ダウンズ。 まさしく歴戦のツワモノ揃い、スーパーグループと呼ばれた。 とは言え、全員この時30歳前後。今の感覚からすれば圧倒的に若い。 脂の乗った絶頂期である。 当時は古いファンから商業主義だ、売れ線だと批判されたものである。これまた今の感覚だと、だいぶ違和感のある言い分であろう。 売れるということは、音楽家=アーティストとしての純粋な自己表現を捨て、コマーシャリズムに屈し、リスナーの歓心に迎合することであるという先入観、あるいは断定。今ではちょっと理解できない心理かもしれない。 ロックは革命と反体制のシンボルであり、左翼の表現と信じられていた時代の残滓と云えようか。 確かにエイジアは、ブリティッシュ・ロックの立役者たちが本気でアメリカのマーケットで売ろうとしたプロジェクトであった。 ジャーニー、トト、フォリナー、スティックスなど、アメリカのスタジオミュージシャンが1970年代前半に活躍したブリティッシュ・ロックからエッセンスを「いいとこ取り」して、商業的な大成功を収めた。じゃあオレたちも、ということで1970年代後半、多くがアメリカ進出を図ったものの、なかなか芳しい成果を得なかった。 1980年代に入って、ブリティッシュ勢はアプローチを変える。ジャーニーのプロデューサー、マイク・ストーンを迎え、より踏み込んだポップ路線を実践したのが時流にジャストミートしてプログレ史上空前の大成功へと結実する。 シングルカットされたHeat of the MomentのプロモーションビデオはMTVでよく流された。中学生だった自分でさえ、大人気だったアメリカのビッグネームとはちょっと違う、どこか垢抜けしたスマートさを感じたものだ。シャープな透明感、当時ちょうど絶頂期だったSONYのブランドイメージにも似てキラキラした印象であった。ハウとダウンズのクリスタルな音質、手数の多いパーマーのドラム、ダンディーなウェットンのハスキーヴォイス。まだまだ若さ溢れるスピード感、ドライブ感も堪らない魅力だった。 音楽そのものはジョン・ウェットンのソロ作品「Caught in the Crossfire」とほぼ同じ。ビーチボーイズやアバにも比するメロディーメーカーとしての傑出した才能がこのポップ路線で功を奏した。さらにそれをイエスで鍛えられたオーケストレーションを加えたアレンジ力の勝利でもあった。 毀誉褒貶の彼方で今、改めて聴けば、まさしくジョン・ウェットンの世界観、音楽だと思う。 (2009/12)