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No.6 Kansas/Monolith(モノリスの謎)

自分が最初に「ロック」というものを本気で意識したのはカンサスだった。 中学生のときである。 七つ年上の兄所有のライブラリーをあさる中でまっさき惹かれたのが「モノリスの謎」。 一言で云えば、「ドラマティック!」これに尽きる。 何も判らない中学生だった当時の自分がやたら感動していたのも無理はない。 ハリウッド映画、アメリカンコミックのSF感覚に近い、単純明快で、たいへんにわかりやすい音楽である。 1979年作品。 一般にカンサスのディスコグラフィーの中では大成功の後で、1980年代に向けて新たな方向性を求めていた過渡期、試行錯誤の作品と扱われる。 昔からそうだが、一部のコアなファンを除いて大勢は今も変わらないらしい。 この評価が自分にはずっと不可解で、私はこれが最高傑作と思っている。 形態としてのプログレ度では確かに「永遠の序曲」までのほうが作りは凝っているが、「モノリスの謎」はそれを越えて、小手先の技巧をできるだけ削ぎ落とし、演奏はタイト、ソリッド。 曲想はシンプルかつ劇的に、という方向性で格段に迫力のある出来栄えである。 それが単純にポップ路線かと言えば、とてもそうは思えない。 スターウォーズ大ヒット後のSFブームとは言え、背景にはキリスト教的世界観が見え隠れする重厚なコンセプトはやはりちょっと時代ずれしている。 スティックスとかジャーニーとか同期バンドが見せたアプローチとは明らかに正反対を示していた。 とは言え、プログレ愛好家としては、全編申し分のないドラマの連続。 基本的にはケリー・リブグレンの世界とは思うが、スティーブ・ウォルシュによる曲も負けず劣らずあくまでもドラマティックだ。 この後、お互いのソロ活動を経て両者の指向の開きはぐっと広がる。 もしかしたらカンサスらしさというものを介してこの二人がぎりぎり折り合った結果が、この異常なまでにドラマティックな傑作をもたらしたのかもしれない。 今、聴きなおすと、夢中だった当時の自分の姿がそのまま音楽の向こうに見えてくる。どこまでもドラマティック、どこまでも壮大。そんな思い出深い一枚である。 (2009/12)