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No.1 Jean-Luc Ponty/Egocentric Molecules

イエス(元、と付けるべきであろうが)のジョン・アンダーソンが、ジャン・リュック・ポンティと新しいバンドを結成するというニュースを目にして驚かされた。
1944年生まれのジョンは70歳。ポンティは少し下であろうが、60代後半。まあ大差はないはずだ。
(実際には、ポンティが2歳年上だった。)
この期に及んで。。。何があってもおかしくない昨今、よほどのことでも驚かなくなっているが、これには驚かされたのである。

 

追加情報として知らされたのは、残りのメンバーだが、ドリーム・シアターのジョーダン・ルーデスの名前が挙がっている他は、ポンティが長年連れ添った顔ぶれであった。
要するに、実態はポンティのバンドにジョンとジョーダンというプログレシーンのビッグネームが招かれるという恰好である。

 

自分のようにジョン、すなわちイエスとジャン・リュック・ポンティの両方を愛好するファンは少なくないだろう。
透明感のある立体的な構築美。簡単に言ってしまえば、両者の音楽性はそんな形容詞の下で一つにくくれそうだ。
元々親和性の高い組み合わせではある。

 

さてジャン・リュック・ポンティだが、彼の音楽を聴くようになって久しい。
30年以上前からである。
1970年代後半に流行したフュージョン、クロスオーバーのジャンルで指折りのタレントであったポンティは同時にプログレッシブロックのファンからも高い支持を受けていた。
ポンティ自身、ジャズロックの本流本家であるマハヴィシュヌ・オーケストラの第二期で準主役を演じたVIPだが、その影響下で発展を遂げたイギリスあるいは欧州のジャズロック、たとえば、ブランドX、ソフトマシーン、ナショナルヘルス、ゴング、ブラッフォードなどの系譜でも、癖のあるファンに認められていた数少ないメインストリーム系ミュージシャンであった。

 

最も有名なのは、アラン・ホールズワース、スティーブ・スミス、ダリル・スチューマー等、錚々たるメンバーが一堂に会した超名盤『秘めた海』(1976年)であろう。
総合点でこれが最高傑作であることは異論がないところだが、「この1曲!」となると私見が異なる。特にプログレッシブロック観点では譲れないところなのだ。

 

それが『Egocentric Molecules』だ。
そう、イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスが提唱した学説で、サイエンスの世界に留まらず、多くの反響と物議を巻き起こした「利己的遺伝子」をタイトルに冠したインスト曲である。
1977年の『コズミック・メッセンジャー』に収められている。ドーキンスの著書「The Selfish Gene」が発刊された翌年の作品。でも正確なタイトルは違うんですね。今、知りました。

 

メンバーは既に入れ替わっている。
後に名声をほしいままにするスタープレイヤーの3人は姿を消して、残ったのはアランザヴォッドとラルフアームストロング。前者はザッパ、後者はマハヴィシュヌからの同僚。役者としては、抜けた3人に劣るわけではもちろんない。プロフェッショナルズ・プロフェッショナルだ。
新加入のギターはジェイミ・グレイザーとヨアキンリヴァーノ。前者は地味だが、ポンティやチックコリアなどの大物周辺でずっと活動を続ける職人ミュージシャン。ホールスワースとステューマーという豪華絢爛な二枚看板に比べるのは、器用貧乏二人にはやはり酷であろうか。
で、スティーブ・スミスに替わるドラムがケイシーショエールという白人ドラマーで、だいぶロック寄りのプレイスタイルだが、これがプログレ視点だと最高に相性が良いのが面白い。個人的には昔からこの人のセンスが大好きであったが、冷静に聴けば、グルーブ感に欠くというノーマルな評価も仕方ないところだとは思う。実際、この人はポンティ以外、特にメジャーな活動はしていない。プロとセミプロの境界線上のミュージシャンだったのかもしれない。だからなのだろう、プロらしからぬ個性があったのだ。

 

今は本当に素晴らしい時代である。
大好きな『Egocentric Molecules』の様々なバージョンを一発検索ですべて堪能できる。
これは、我が人生観をひっくり変えすに十分な、まさに革命的現実だ。

まず最初。オリジナルのスタジオ録音。ただし、全体に優等生的演奏であり、私が「この1曲!」と推すのはこれではない。 



続いてオフィシャル版のライブバージョン。
すべてが前のめりにドライブする、これぞ究極、と言うべきベストパフォーマンスである。