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No.82 The Flower Kings / Flower Power 1999

The Flower Kings Sweden
1990年代に入って、確かに世界のプログレッシブ・ロックを取り巻く環境は変わった。
きっかけは仏ムゼアレーベルや伊ヴィニールマジックなどの専門レーベルからのCD再発ラッシュ、そしてそれに呼応してメジャーとマイナー双方から高水準の傑作が相次いだことだろう。
1990年代半ばからのネットの普及も大きかった。 
元祖「北欧の伝説」だったKaipaのRoine Stoltがよもや復活しようとは、1990年代初頭にKaipaの再発盤を聴いていた当時、夢にも思わなかった。
しかし現実は、あたかもベルリンの壁崩壊からソ連解体まで雪崩を打つように進んだ冷戦構造の終焉にも似て、一挙に様変わりしていく。
1994年にリリースしたソロ『The Flower Kings』は、涙無くしては聞けない魂の名作ではあったが、われわれファンは一枚で終わっても仕方ないと覚悟していた。
ところが、Roineはそのままバンド名とし、本格的なライブ活動をスタートした。
短いインターヴァルでアルバムが出る度、これで終わりかと思われた。
しかし、そんなファンの不安をよそに快進撃を続ける。

エポックは、1997年のLAでのプログフェストへ出演し、John Wettonや盟友のSpock's Beardらとの共演を果たしたことだろうか。 
1999年春には何と初来日も実現した。
その直後にリリースされた『Flower Power』は前作に引き続き、またしても2枚組の大作。
しかも一枚目はディスクのほぼ全編を占める1時間の組曲「Garden of Dreams」である。
事前にはオーケストラとの共演とか、混声合唱との共演とか言われたが、そこまで大掛かりなプロダクションではない。
来日公演でもその抜粋を演奏したが、短いパートを数珠つなぎにした構成であり、Roineの身上とする一本気なシンフォニック・ハード・ロックに、これまで以上にTomas Bodinのセンスを加えた作風だった。
リリース当時は、特に演奏パートのテンションが少し弱く感じた覚えがある。
さすがに押しに押してきた過去4作に対して、意図的に引いてみせたのではあろう。

今、聴くと、素朴な歌メロが心に沁みる。
Roineのヴォーカルもまだ初々しい。

同じ年にRoineは、Dream TheaterのMike Portonyの企画による「スーパー・グループ」のTransatlanticに、Spock's BeardのNeal Morseとともに参加し、期待に違わぬというには、少ながらず予定調和な傑作を発表する。
これによって、彼は晴れてプログレ史上のメジャー入りを果たした。

そう考えてみると、この『Flower Power』がまだ無名だった時代のピュアなRoineの最後の姿だった。
確かに、Transatlanticへの参加は、彼の音楽的ポリシーに影響を与えた。
単純に言うと、プロらしい風格を感じさせるようになったのだが、古くからのファンとしては複雑な思いを抱いたものだ。

今なお、『Flower Power』の歌メロが特にピュアに感じられる理由かもしれない。