No.75 Cat Food /King Crimson

今は亡き北村昌士さんによるキング・クリムゾンの評伝『キング・クリムゾン―至高の音宇宙を求めて』は、情報の少ないネット石器時代にかけがえのない情報源だった。
1981年の上梓だから、やはり北村氏が『フールズメイト』誌のまだ編集長だった時期であろう。
その中でも紹介されているように、初期クリムゾンは、当時のロック・シーンに一大センセーションを巻き起こした『宮殿』の大成功とは裏腹に、北米ツアーで疲弊したイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズが脱退し、早くも空中分解の危機に直面していた。
特にマルチプレイヤーのイアンは、『宮殿』では、主役のフリップ以上の中心的パフォーマンスを示し、まさに余人をもって代え難い活躍ぶりであった。
そのような中、リーダーのロバート・フリップがジャズ・ピアニストのキース・ティペットを招聘し、メル・コリンズやアンディ・マクローチといった、今から改めて思うと奇跡に近い、実に高水準な人材をリクルートしてバンドを再編成するわけだが、その過渡期の活動トピックにBBCテレビの音楽番組『Top of the Pops』への出演があった。
このことは、北村氏の著書でも詳しく、また思いの外、正確に記述されている。
その時点で脱退が決まっていたマイケル・ジャイルズが弟のピートとともに再出演し、新加入のキース・ティペット、それから同様にキース・エマーソンとの新バンドを構想中だったグレッグ・レイクも残ったままの編成で、新進気鋭のニューカマーとして、キング・クリムゾンが紹介される。
あまりに場違いなショウビスの只中にキング・クリムゾンという、今や伝説的な存在が出現したということを再認識させられるわけだが、最近になって、その時の映像がYouTubeにアップされて閲覧できるようになった。
ただただ絶句するより他にないネット革命の成果だ。

確かに絵柄自体は、本当にもうずっと前から見覚えのあるものである。
右から直立不動のピート、椅子に座って微笑を浮かべるフリップ、後方にマイケル、前方にアコギを構えたグレッグ、そして左サイドにキース。
この時、全員が20代。フリップもまだ20代前半だから驚きだ。
あどけなさが残るグレッグはアイドル風美少年、キースはフランケン風コワモテ。
生演奏はしていない。口パクだ。
その後の歴史を知れば、いかにも不自然なフォーメーションなのだが、何やらスノッブな若い男女がたむろすダンスクラブ風の会場と、そこで初期ビートルズ風の硬いコスチュームをまとった面々、そしてこれが『宮殿』リリースのわすか半年後、そしてフリップを除くイアン、マイケル、グレッグが脱退し、そのうち、グレッグはこの年のうちにかのワイド島フェスでエマーソン・レイク・アンド・パーマーとして華やかなデビューを飾るわけだから、どこまでも感慨深い一シーンである。